気付けば自分は、その世界の頂点にいた。
誰も立つことのできない高みにいた。

コードネーム、0000(ゼロフォー)。
しかしその名で呼ぶ者はこの組織内にはほとんどいない。


皆は俺のことを刹那と呼ぶ。
俺が依頼をこなす速さからつけられた名前だ。

ただしこの名は俺が言いだしたわけではない。

言いだしたのは…。


「刹那さん」

黒いレースをふんだんに使った服を着た彼女が、俺の背後からやってくる。

振り返れば、その華奢な腕に抱かれた白いウサギのぬいぐるみには鮮血が散っていた。
まるで、花びらのようだった。

「依頼、終わったよ」

彼女のコードネームは0001。
しかし彼女もこの名で呼ばれることは無いに等しい。

その腕にあるぬいぐるみから、彼女はラビットと呼ばれる。

顔と服装に似合わず、殺しの腕は一流だ。