「……クロ」 ダメ元で肩を揺すってみる。……うん、微動だにしない。 僕は起こすことを諦めて、深く深呼吸をした。 すぐに諦めるのはよくないって言う人もいるけど、諦めは肝心だよ。 叶うはずのない夢を追いかけ続けて絶望する人を、僕は何人も見てるから。 大きく伸びをしてから、もう一度クロに視線を移す。 まだ起きそうにない。 艶やかな黒髪を優しく撫でると、クロは心地よさそうに微笑んだ。