結花の制服が夏服に変わり、本格的な夏がやって来ると、ぼくら受験生は、もうまったく遊ぶ余裕なんてなくなってきた。

ひたすら、学校、予備校、自習、就寝…、たまに息抜きのデート。


でもぼくは、通学は必ず結花と一緒にすることにしていた。

「おはよう、翔ちゃん」

結花の白い腕が、朝日に照らされてぴかぴかしている。
このときだけが、ぼくの一日のうちでいちばん幸せなひとときだった。



ある日、ぼくらは、途中の駅で乗ってきた和尚とばったり出くわしてしまった。

和尚は、混雑した電車のなかでひときわ目立ち、そしてぐいぐいと人並みに押されて、ぼくらの間近にまで来てしまった。


「おはよ」
彼は、どちらにでもなく挨拶した。