「それでも、燃え尽きたい恋ってあるんだろうな…」
ぼくは花火を思い出して言った。


「じっくり、時間をかけてわかりあえる恋っていうのもあるんじゃない?」

「そういうの、ぼくらの歳じゃまだ早いような気がする」

「かも知れないけど。そのうち、翔ちゃんと結花にもそういう時期が来るかも知れないから、こころの準備しておくことね」

「なんだか、意味深な言葉だな」

「深く考えない。運命は、待っているときを要求することもあるのよ」


ざぶんと愛子がまた水のなかに入っていった。

あいつ、哲学者だなと感心するとともに、「こころは男だよ」とまえに和尚が愛子のことを指して言った言葉を、ぼくは思い出していた。