「お姉ちゃんの髪綺麗…。」
「柚ちゃんの髪の方が綺麗だよ。お人形さんみたい。」
柚ちゃんの髪を撫でると、柚ちゃんは急に俯いた。
「ゆ、柚ちゃん!?」
慌てて柚ちゃんの顔をのぞき込むと、目に涙を溜めていた。
「……ぐすっ…会いたい…。ママに会いたい…。」
柚ちゃんはそう言って、涙を堪えていた。末っ子で、一番甘えたい歳なのに、お母さんがいないのはどれだけ寂しかったか……。
坂原も、他の二人もそう。ずっと辛い思いをしてきたのだろう。
ましてや柚ちゃんは女の子だ。男の子だらけの兄弟だから、女の子の遊びも、お洒落だってできなかったはず……。
「柚ちゃん………。」
いてもたってもいられずに、柚ちゃんを抱きしめた。あたしは、気の利いた言葉も、優しい言葉も知らない。それでも…………。
「あたしね。辛い時は、こうやって抱きしめられると安心出来るって最近気付いたの。人ってあったかいね。」
柚ちゃんは小さく頷く。


