「離してっ!!陽っ…陽の所に!!」



必死にもがいても、前に進めない。



「陽っ!!」


「しっかりしろ!!」



あたしを抱きしめながら、誰かが叫んだ。一瞬にして、静まり返る。



「…幸、お前が死んだら…。坂原先輩が…命懸けで守った意味ねぇーだろうが…。」



後ろから強く抱きしめられている。背中に温もりを感じた。



この声は……七瀬……?



「…お前がそんなんじゃ…坂原先輩が泣くぞ?」



「…っ…でもっ!!あたしのせいでっ…あたしがっ…殺した………。」



あたしがあの時死ぬはずだったんだ…。



なのに……。どうして陽が死ななきゃいけないの…。


「それは違うだろ!!」



「あたしが死ぬはずだったのにっ!!陽が庇ってっ…。」



大事な人…愛しい人…。あたしはこの世で一番大切なモノを失った。



目よりも…自分の命よりも……大事なモノだった…。


「あたしのっ…せいだよ…。」



力無く立ちつくす。あたしは、絶望と悲しみの狭間にいる。もう…あたし……。


「…生きていけない……。」



陽のいない世界に…あたしの居場所なんか無い…。



あたしの居場所はいつも、陽の隣だった…。