「…やっぱり…無理だ。幸が…俺といれば辛い思いするって…分かってても…。分かってても…無理なんだよ…。」



陽の言葉に涙が出る。



駄目だ…。甘えちゃ…駄目。陽はあたしを気遣かって言ってるだけだ…。



「…もう一度…一緒にいたい…。」



陽の言葉に、あたしは首を振った。



「…陽……。あたしといたら疲れるでしょう?可哀相だから…傍にいるんでしょう…?」



あたしは涙をポロポロと零して、抑えきれない感情を陽にぶつける。



「…幸…?何言って……。」



「隠さなくていい!!あたし…聞いてたんだよ…。金宮さんと陽が話してたの…聞いてたの。」



あたしは陽の手を振り払い、陽を見つめた。



「…あたし…苦しかった…。辛かった。陽をそんなに苦しめてたなんて…知らなくて………。」



「あれはっ……違う!!そういう意味で言ったんじゃっ…。」



陽はあたしに手を伸ばす。あたしは一歩さがり、その手を避けた。



「…あたし達は…終わったでしょう?別れたんだから…お互い近付くのは止めよう?」



あたしはポケットから、片翼のペンダントを出す。



「…陽……。さよなら…。」



ペンダントを陽に握らせて、逃げるように走った。



「幸っ!!」



陽の足音が近付いて来る。今は…会いたくないっ…。


目の前のバス停に、丁度良くバスが止まっている。あたしはそれに乗り込んだ。


ビーーッ…プシュッ



扉が閉まる。あたしは一番後ろの席に座り、後ろを振り返った。



そこには、立ちすくむ陽の姿がある。



陽の足が早いとはいえ、先に走り出した陽はあたしに追いつかなかった。



椅子に深く腰掛ける。また泣けてきた。



バスの行き先は、どうやら駅のようだ。



もう何処でもいい……。早く此処から離れたい…。



あたしはそのまま、窓に頭を預けて心地よい揺れを感じていた。