12月。冬休み真っ只中のあたしは、望と病院から帰る道のりである川沿いを、望と手を繋ぎながら歩いていた。



病気の進行が進み、一人では出歩けなくなってしまったのだ。



覗き穴を覗いているような感覚だ。横の視界は全く無い。見えるのは正面だけだ。



本当に少しずつだから、視野が狭くなっていくのが自分で分かるわけでは無いけど…。



今実感する。もう時間は無いって事。



「お姉ちゃん、見て見て、雪だよ!」



望を見ると、目を輝かせて空を見上げている。



あたしも目を懲らして空を見上げると、白い小さな粒がハラハラと舞い落ちてくる。



「…綺麗………。」



この雪は…あたしが人生最後に見る雪なのだろう。



しっかりと目に焼き付ける。



「お姉ちゃん、寒くない?」



望の心配そうな声が聞こえる。あたしは笑顔で首を横に振った。



「大丈夫。寒くないよ。」


あたしは雪に手を伸ばした。あたしの手に触れた雪は、一瞬にして溶けてしまう。



儚い物だな…。だからこそ、美しいのだと感じられるんだ。



「望、少し川を見てくる。」



「え?お姉ちゃん!?」



望の返事も待たずに、川に近付いた。