「…ん…………。」
風が頬を撫でる。9月の風は少し冷たい。
目を開けると、さっきよりも暗くなっていた。
「…え…やだっ…あたし寝ちゃってたの!?」
慌てて上半身を起こすと、誰かの上着がかかっていた。
「…起きたの?」
聞き覚えのある声が、隣から聞こえる。振り向くと、陽がいた。
「…………陽……。」
一番会いたくて…一番会いたく無い人。あたしは矛盾してる。
「幸に電話したんだけど、繋がらなくて…心配になって家に電話かけたら帰ってないっていうから…探したじゃん。」
陽の声が苛立っているのが分かる。
「…………………。」
それでも、何も言わなかった。だって…陽があたしを突き放したんじゃん…。あたしは…こんなに不安なのに…。
「危ないじゃん!!こんな所に一人で寝てたら!!女の子なんだから、何されるか…。」
その言葉にあたしはキレた。
「関係ないでしょ!!あたしが何処で寝てたって!!」
なんで怒られなきゃならないの…?元はと言えば陽があたしに隠し事してるからじゃん。
見てれば分かるよ…陽、何か隠してる。
「関係ない?幸は俺の彼女じゃん!!関係大有りだ!」
陽は怒ったのか、あたしの肩を強く掴む。あたしも負けじと陽から視線を外さない。
「…隠し事してるくせに…。」
「…………え…?」
何の事か分からないというような顔をしている。


