「………そろそろ日が暮れる。家まで送るよ。」
陽があたしの手を引く。
「陽といると…時間がすぐに過ぎちゃうみたい。」
たわいもない話をして…寄り添って…。それだけでもう日が暮れている。
「楽しい時間はすぐ過ぎるっていうからな!」
あたしの腕を引きながら、家の方面に向かって川沿いを歩く。
「本当だね。本当にあっという間…。」
あっという間に時間が流れてしまう。幸せな時間を過ごす度、あたしの視野が狭まっていく。
あっという間なんだ…。何もかもが…。
ドンッ
「わっ!?」
一歩前を歩っていた陽が、突然立ち止まる。そのせいで、陽の背中に顔面をぶつけた。
「ど、どうしたの?」
顔を覗き込むと、陽は何かを考え込んでいるような顔をしていた。
「陽…………?」
心配になって陽の腕を揺すると、バッとあたしに向き直った。
「幸!!9月22日用事あったりする!?」
「…………は?」
いつになく真剣な顔をしていたから、何を言い出すかと思ったら…。
「なんで?」
「なんでも!!」
そう言って陽ははぐらかす。


