夏休みが終わり、体育祭が終わり…。あたしはいつものように、同じ日々を繰り返していた。



記憶を失った事で、家族とはまた違う絆が出来た。


ただ一つ。違う事といえば……。あたしに彼氏が出来た事だ。



「…どーしたの?幸。」



ぼーっと遠くを見つめているあたしを、坂原は心配そうに見つめている。



「…何も無いよ。」



そう言って笑顔を返すと、陽も安心したように笑った。



いつもいつも…。あたしを見ていてくれる。



あたし達は、学校をサボって川原に来ていた。



太陽が出てるから、陽は外に出るのは止めようって言ってたけど、強引にあたしが連れ出した。



だって…。あとどれくらい、あたしの目が生きているかわからないでしょ。



沢山の物を見て、この目に焼き付けたい。



空を見上げる。青くて…雲一つ無い。快晴だ。




「………綺麗だね…。こうして空が綺麗に見えるのは、あたしの目の命が、残り少ないからだね。普段何気なく見ていた物が、こんなに尊い物だったんだって気付けた。」



「何言ってんの!見えなくなっても…俺が、幸の目になる。だから大丈夫だ!!」



そう言って陽は、ニッと笑う。



あたしとしては、空なんかより、陽の笑顔が見れなくなる方が辛い。



もちろん陽には、こんな事言えないけれど。