「……お母さん……。」


あたしは自分から沈黙を破った。坂原が作ってくれた機会を大切にしよう。



「あたし…記憶を取り戻したい。確かに、忘れちゃったのにはわけがあると思う。それでも知らなきゃ…。ずっと逃げて生きていくのは嫌なの。」



全てを知った時、あたしはどうなるか分からない。でも……。



「受け止めるから…。ちゃんと前に進まなきゃいけないから。」



「それでも…私は賛成出来ないの。あなたが勝手にやるならいいわ。でも、私は、あなたが傷付くのを分かっているから、手は貸さない。」



そう言ったお母さんは、涙を流していた。



「それでも、あなたが記憶を探すのなら…止めない。」



お母さんの言葉にあたしは笑顔を浮かべた。自然に出た笑顔だ。



「ありがとう…お母さん。」



そう言ってお母さんを抱きしめた。お母さんも抱きしめ返してくれる。



お互い望んでる事は違うけれど、絆は繋がった気がした。