「幸さんの目が、視野狭窄を始めました。周りから少しずつ、視野が狭まっていきます。そうですね…五円玉をのぞいているような感覚です。幸さんの場合、進行が早いので、完全失明の確率が極めて高いでしょう…。」




頭が真っ白になった。



遠くで、お母さんの泣き声が聞こえる。お父さんは悔しそうに拳を握り締めていた。あたしの事が大嫌いな筈の望が泣いている。



なのにあたしは……。涙が出なかった。悲しいなんて思わなかった。



「…………幸ちゃん…。」

「…はい……。」



先生は真剣な瞳であたしを見つめる。そして、肩に手を置いた。



「受け止めなきゃ駄目だよ。目が見えなくても、生きてさえいれば絶対にいい事がある。だから…」




先生の言葉が、頭に入ってこない。気が遠くなるようだった。