「あたしを思って泣いてくれたから、ありがとうだよ。」




誰かにこうやって、素直に言葉を伝えられるようになったのは、坂原のおかげだ。




「私のほうこそっ…ぐすっ…命をっ…助けっ…て…くれて、ありがとうございますっ…。」



鮎沢さんは、泣きながらも笑顔を浮かべていた。



あたしは坂原に視線を移した。坂原はあたしに向かってニッと笑う。その笑顔につられてあたしも笑った。



この笑顔を…。あたしはあとどれくらい見続けられるのだろう…。



空を見上げる。雲が流れているように時間が過ぎる。それは決して変えることの出来ない理。



いつか止まるあたしの時間。それまでにあたしに何が出来るんだろう…。