「可愛い顔が台無しだわあ」

千春がぼやく。いつもいつも顔を会わせる度に「笑え」と言ってくる彼女は私の幼馴染みである。
しかし、笑えとは言うけれど、それだけで無理に強要してくることは絶対にない。つまりは私の一番の理解者。

「遥さん遥さん、一緒に帰りませんか」
「いつも一緒に帰ってるでしょ。いちいち聞くな」
「愛想が悪いよ。千春ちゃんグレるよ」
「どうぞ御勝手に。行きますよ」
「あいさー」

へーいというやる気の全く感じられない声と共に千春が鞄を背負う。
バスケ部のこいつはジャージも教科書も全部入って楽だから、という理由で大きな黒いエナメルバッグを学校鞄として愛用している。
ちなみにエナメルバッグは部活動専用のバッグとして以外の用途で使用することは校則で禁止されている。

しかしそんな彼女を注意する先生は居ない。それは多分彼女のおおらかな性格から。あとバスケが天才的に上手いという点で先生達のお気に入りだからだろう。
こういうのを贔屓というのではないだろうか。全く他の生徒に示しがつかない。

まあなんにしろ校則をしっかり守っている生徒なんて殆んど居ないのだが。
生徒会ぐらいじゃないの?