よっしゃ、恋愛小説を書こう

キーンコーンカーンコーン♪
キーンコーンカーンコーン♪

チャイムが、あたしの意識にでこピンをした。

「そろそろ教室戻ろ。先生来るや」

「ああ」

まずい。

ここで見つかったら、啓介と余計に気まずくなる。

さとことも、絶対ヘンな雰囲気になる。

それは避けたくて、あたしは階段をジャンプした。

ばん、と着地のときに音がする。

その音は廊下に、異様に響く。

しまった。これじゃだれかいたって二人にばれる!

ああもうっ、仮にそうだとしても、あたしだってばれなきゃいいっ!

教室まで全力疾走。

ぎりぎり、二人が階段側から廊下側へ来る前に、教室に入れたはずだ。

あとは息を整えて、あたしは啓介をつけてません、ずっと自分の席に座ってましたって風にしてればいい。

がらりと、教室のドアが開いた。

啓介が、続いてさとこが入ってくる。

声でわかってたけど、やっぱり、この二人だった。

さとこはさっさと自分の席に行って、啓介はゆっくり、歩いてくる。

そのとき、あたしのほうをジッと見た。

見つめ返せない。

ぷいと目を逸らして窓のほうを向くと、啓介は、まだ立ってるみたいだった。

たぶん、まだ、あたしのことを見てる。

啓介はそのまま、一時間目の先生がやって来るまで座ることもなく、あたしのことを見ていた。