よっしゃ、恋愛小説を書こう

ブブブ……
ブブブ……

と、ケータイのバイブ音が聞こえた。

聞き耳ばっちりのあたしには、よくわかる。

啓介のケータイだ。だって、すぐ隣から聞こえたし。

っちゃ。

ケータイを開く音。たぶん、メールなんだろうな。

そんなことを思っていたら、椅子が動く音。啓介が立ち上がった。

びっくりして振り返ると、啓介は教室を出て行こうとしていた。

(あれ? ……トイレ?)

かと思ったけど、トイレとは反対方向に廊下を出た。

そして、さっきのメールだ。

だれかから、なにかで、呼び出し……? 用事?

もうすぐホームルームが始まるのに、どこ行ったんだろう。

いつもの啓介なら、ホームルームまでまた飽きずに、文庫を読んでるはずなのに。

そのとき、ふと――。

頭の中に、よっちゃんが言っていたことと、さとこのことが、浮かんだ。

教室の中を見渡してみると、さとこは……いない。

これって、もしかして……。

さとこがあたしに言ったのは、探りだったのかもしれない。

啓介のことが、好きなのかどうか。

仮に、啓介に彼女ができたら、あたしが嫉妬するか。

あたし、なんて答えた?

たしか、全然気にしないとか、そんなっぽいこと言ったと思う。