よっしゃ、恋愛小説を書こう





なんとなく……気まずい。

こないだの帰り道、啓介に怒鳴り散らしてからこっち……もう三日になるけど、満足に啓介と話してない。

朝も、帰りも、別々だし。

すぐ隣の席だってのに、あたしは無理やり啓介を見ないように、窓のほうばっかり向いていた。

いつもの喧嘩とは違う――妙な感じ。

別に、どっちかが悪いことをしたわけでもないのに。

ただ、あたしが小説を読ませるのが、恥ずかしかっただけなのに。

……あれ? なんであたし、こんな気まずいんだろ。

チラッと、ほんとチラッと見れば、啓介は今日も飽きずに『吾輩は猫である』を読んでて、いつもとなんにも変わらないっていうのに。

やっぱり啓介のほうを見ていられなくて、窓のほうに顔を向ける。

それでも、なぜか、耳だけは啓介が今なにをやってるか、ものすごい聞き耳を立てていた。

これは、そう、……あの、あれよ。

もし啓介が動いて、あたしに手を伸ばしてもすぐ逃げられるように。

だって、ほらっ、また小説読ませろって言われたら、あれだし。

……そんなこと、ないだろうけどさ。