よっしゃ、恋愛小説を書こう

「あ、ぅ……あぁぁあ……」

自分が書いた話とはいえ、ことみが小説の中で言っている言葉が、ものすごく、ものすごくものすごく、恥ずかしい。

それを、啓介が、よよ、よ、……読む……?

「……め」

「うん?」

はっきり言葉にできなかったせいで、啓介があたしの顔を覗き込む。

あたしは啓介の肩をどんと押して、突き放した。

「ダメ! 絶対ダメ! つか無理! 無理だから!」

「なんでだよ。そんだけ毎日、感想ついたーっ! って報告しに来てるくせに、まさかいまさら恥ずかしいとか言うのかよ!」

「ダメなものは、ダメなの!」

「なんだよ、わけわかんね。ちょっと貸せよ」

「あっ、ちょっ!!」

アンタはいつの間にそんなに手が早くなった。

ひょいとあたしからケータイを取り上げる啓介が、ボタンをぽちぽち操作する。

まずい。

そのうち変えればいいやと思ってたタイトルはまだ、『私達は幼馴染みである』のままだ。

小説のタイトルを見られたら啓介のことだ、すぐピンと来て、なにか言うに違いない。

そして、感想文と照らし合わせて、その幼馴染み達が小説の中でどうなってしまってるかも、想像するんだろう。

まずい。まずい。まずい。

「かっ、返して!!」

「うわっ」

ほとんど飛びつくように、啓介からケータイを奪取する。

もう取られないように、胸ポケットにしまってから、一気に距離を開けた。

立ち止まって、あっけに取られてる啓介に振り返る。

「きょっ、今日はもうあたし、先帰るから! けっ、啓介のバカ! デリカシーなし! 乙女の心を覗くなーっ!」

啓介がなにか叫び返してきたけど、そんなの耳に入らないくらい全速力で、あたしは逃げ出した。

なんで、こんなに顔が熱いんだろ、あたし。