よっしゃ、恋愛小説を書こう





次の日。

授業が終わって、部活に行く。

あたしはソフト部、啓介は野球部。

男女の違いはあるけど、部室も近いし、あたしらの仲だから一緒に教室を出る。

悔しいことに、いつの頃からか追い抜かれた背は今や、啓介のほうが頭一個分大きかった。

あたしの頭が、彼の首辺りにしか届かない。

歩きながら、意地悪に聞こえるように言ってやる。

「そういえばさ、聞いたよー? アンタ、女の子にコクられたんだって?」

「は? なんだよそれ」

「またまたー。とぼけちゃってー」

「知らないって、マジで。だれの話してんだよ?」

啓介の言葉が、真剣だった。

本当に心当たりのないことを言われて、少し怒ってるみたいに聞こえる。

あたしは、思わず立ち止まっていた。

「……マジで?」

「マジ。つーかそれ、だれに聞いたんだ?」

さとこに、とすぐに答えられなかった。

なんでさとこ、そんな嘘ついたんだろう。

あれ?

嘘、ってことだよね。

なんで?

……もしかして。

啓介に告白する女の子がいたらどうする? ってのを、聞き出したかったの?