よっしゃ、恋愛小説を書こう

「ね、そんなおもしろいの? って」

「うるさいな。なんでそんな聞いてくるんだよ」

「だって、いつもそれじゃん。なんでだろって思うもん」

「俺がなに読んだっていいだろ?」

「そーゆー言い方するぅ? フツー」

今の言い方、カチーンときた。

「いいですよーだ! どうせあたしには、夏目漱石さんのよさなんかこれっぽっちもわかりませんよー!」

「そんな風には言ってないだろ」

「言ってるようなもんだもん。いいよ啓介なんか。どーせ啓介には、ケータイ小説のよさはわかんないだろーし!」

「あーはいはい、わかりませんよ」

「ふんっ」

ぷいと、お互いにそっぽを向き合う。

そのとき、偶然視線の先にいたさとこと、ばっちり目が合った。

どうやら、あたし達のほうをずっと見てたらしい。

さとこは、あたしと目が合った瞬間に、電気でも走ったように顔をそらして、教室を出て行ってしまった。

……?

なんだろ……?

結局、その日の喧嘩も、いつもの喧嘩と同じ。

部活が終わって、帰るとき――。

校門で偶然一緒になって、そのときにはもう、お互いどうとも思ってなかった。

「帰っか」

「そだね」

そんなやり取りが、気楽で、心地よかった。