よっしゃ、恋愛小説を書こう





ケータイ小説を書き始めて、1週間くらい経った。

少しずつ読者が増えて、あたしの更新を待ってくれる人も増えてきた。

啓介に向けて、「どーう?」と得意げにケータイを見せつける。

そこには、『更新待ってます!』とか、『ことみがこれからどうするのか、すごい気になります!』とか、感想がついてる。

もちろん、今度は『私のも読みに来てください!』とかはなし!

「ほらー、ちゃんと読んでくれる人がいるんだよー!」

「ふーん。よかったな」

「なになにー? なにさー。あたしがソフト部でがさつな女だからって、小説なんか書けないって思ってたー?」

「そこまで言ってないだろ」

ため息混じりにそう言って、啓介は文庫本を閉じる。表紙があたしにも見える。

「……ねえ」

「なんだよ」

「いやさ、いったいいつまで『吾輩は猫である』読んでんの?」

「……いいだろ、別に」

「いいけどさ、別に。でも、ずっとそれじゃん。そんなハマるの? 『吾輩は猫である』って」

あたしが今まで読んでたケータイ小説とかと比べたら、『我輩は猫である』は分厚いほうだと思うけど……

そんな、一週間以上もかかるような本には見えない。

特に、啓介はひとりでいる時間さえあれば読んでるわけだし。

もしかして、読み終えてもまた一から読み直してるの?