魔女はそのまま姿を消しました。


そして、自分の館へと帰ってきました。


森の奥に、隠れるようにある館へ。


そしてそこには


「お帰りなさい。」

「あぁ、ただいま。」


エステルの姿が・・・。


魔女はそのままエステルに近づき、キスをしました。


「そのままでキスしないでと何回言ったらいいのかしら?」

「わかったよ。」


魔女はため息を吐くと、指を鳴らしました。


すると、どうでしょう。


魔女の姿は、素敵な男性に変わりました。



実は、彼は元々男なのですが、魔法を使う際には女の姿になるのです。



男の姿の時に、エステルに出会い、二人とも急激に惹かれあっていきました。


ですが、このことは誰も知りません。



「兄さまは大丈夫かしら。」

「君の兄さまは、恋もまともに知らないんだな。」

「義姉さまに出会うまで、兄さまを愛してくれる人がいなかったから・・・そう言うなら、あなたこそ知らなかったわ。」

「なるほど。そうだな。私もお前に恋をしたからこそ彼女の痛みが分かった。」

「義姉さまは、本当に兄さまを愛していらしたのに・・・」

「男の欲に誘惑され、本当に大事なことを見失った結果だ。人間誰でもあることだ。」

「あら、あなたも?」

「あぁ。私も男だ。こんな夜に愛するものと二人きりだと、楽しいアレコレの一つや二つは考えてしまう。」


無機になって言ったにも関わらず、サラッと受け答えた彼に、エステルは頬を赤く染めるしかありませんでした。




「義姉さま・・・目を覚ますかしら。」

「本人次第だろうな。あれは、彼女の悲しみに暮れた心を満たさないと、目を覚まさない魔法だ。君の兄次第で、どうにでもなる。」