〔義姉さま・・・ごめんなさい。あたしが、いない間にこんなことになっていたなんて。〕

〔仕方ないわ。耳と口が不自由な私のせいですもの。〕

〔そんなこと言ってはいけません。耳と口が不自由ですけど、義姉さまには美しい心があります。それだけで満足しない兄さまに問題があるのです。〕

〔エステル・・・〕

〔義姉さま、ご自分を責めないで下さい。わたくしが何とかしますから、義姉さまは、何も考えずにお休みください。〕


ルイスは久々の優しい言葉に、涙したのでした。


兄さま。

義姉さまにしたことは、女としてこの上ない屈辱です。

しかも、義姉さまが一番辛く思っていらっしゃる、耳と口のことをそんな風に言うなんて。


エステルは、兄への怒りに満ちていました。




───────────・・・


その頃、兄のラウノは、噂の隣国の姫と会っていました。


ラウノは決してルイスほどの美人ではないけれど、話上手な彼女と楽しい時間を過ごしていました。


けれど途中、大臣に呼ばれ少し席を外したのでした。


そして戻ってくる時に聞いてしまったのです。


隣国の姫が、おつきの者と話している内容を。


「愛するわけないじゃない。あんな呪いのかかった男なんか。王子だし、見た目もいいから、付き合ってるだけよ。」


王子様は愕然としました。


昔から、密かに言われていたことでした。


『王子様は呪われている。口を開けば毒ばかり。誰も相手になどしないだろう。』