カーテンの隙間から、ななめに伸びた光の筋を沢山の小さな埃が通り過ぎる。

まるで高校生活みたいだ。

3年間過ごしたこの体育館とも明日の卒業式でサヨナラ。

パイプ椅子が並べられているから、もうバスケットは出来ない。

それでも、手に持ったボールを床に向けて弾ませてみる。

タン、タン、タン

「よっ!」

膝を使って、指先から離れる瞬間を楽しみながらシュートを放つ。

フワリとスカートが広がる感覚。

ザッとネットが揺れる。

心の中でガッツポーズ。

テンテンと弾むボールに歩み寄る。

その時、鉄の扉が重い音をたてて開いた。

薄暗い体育館に大きな光の道が出来た。

「あれ、泉谷じゃん、なーに黄昏てんだよ。」

「うるさい。」

入り口に立つヤツに拾い上げたボールを投げつける。

ボールをキャッチしやがったヤツは、三歩目でレイアップシュート。

見事。

「泉谷もS大だよな。」

コンと足を使いボールを拾い上げながらヤツがたずねる。

目線は手に持つボール。

「ですけど何か?」

わざとおどけて見る。

「大学、でもバスケやろうな。」

少しイジメてみたくなった。

「山本、女子バスケに入るの?」

「やめた。」

ヤツは突然、ボールを転がし出口に向かう。

「ゴメン!」

慌てて謝ると、ヤツは歩みを止めた。

「一緒に帰ろうよ。」

ヤツは振り向かずに、手でOK。

どうやら、高校生活最後のシュートは、無事決まった様だ。