*中貴原*

初めて見たとき、その容姿の美しさに戸惑った。
と同時にイラついた。

それにあいつがみんなに向けた笑顔を見た瞬間、俺はあいつが大嫌いになった。

あいつの笑顔は、まさに外面の塊。

俺と同じ。
…気がする。

自分も常に本心を隠して鉄壁な外面を保っていたりしてるからすぐ分かる。


だから、だからちょっとだけ
あいつのまえで俺の裏をさらしてみようと思ったんだ。


そしたら予感的中。

あいつも俺と同じく、いつも鉄壁の外面を完璧に演じていた奴だった。

おそらく鉄壁外面の高さは二人とも互角。


さっきまで俺と似てるから正直苦手だったけど
なんか今では親近感さえおぼえてきた。


今まで、たくさんの人と出会って、
友達もたくさんいる。
でもその友達は俺の“表の顔”の友達に過ぎない。

あいつが、本当の俺を知って、
本当の俺の友達になった感じがして
なんか嬉しかった。


「もともと可愛いけど、その顔の方が100倍可愛い。」

素直な感想だった。

思ったことがそのまま出てしまった、という感じ。

ヤバい!
っと思った時にはもう遅かった。

案の定、あいつは大きな目を見開いて驚いている。


…∑


その顔が美しくて、

捕らわれそうで、

スキになってしまいそうで、

俺は、ほんとはまだ時間はあったのに
「筋トレが始まるから」と言って
教室をあとにした。