それなのに海理はまるで俺の言葉が聞こえていないようで。

このままなのは流石にやばい。俺の気持ちの面でも、ヤツの体調の面でも。


「やめっ、ろ!」


だからまだ続けようと手を伸ばす海理を、ありったけの力で突き飛ばした。

……普段の海理なら、きっとこうした後はすぐ起きて、

更に変なスイッチが入って乱暴さが増す。なのに、海理はなかなか起き上がってこない。

その辺に放ってあった寝巻を慌てて着て、傍に駆け寄って額に手を当ててみた。


「雪! 月花でも良い! 誰か!」


次の瞬間には部屋を飛び出してどちらかを探していた。

自室にいるには違いないけれど、この時間だといない時の方が多い気がしたから。

あの二人は。