眠ったままのこいつにそうするのも一体何度目だろうか。

ふと彩十の胸元に輝く青い石の首飾りを見ながら物思いにふけろうとした時。


「ん…………」

「彩十!?」


小さな呻(うめ)きのような声が聞こえたかと思えば、彩十はゆっくりと目を開けた。

まだその目は眠たそうな目をしている。

ぼんやりとオレをじっと見てから、彩十はまだ寝ぼけたような声で言う。


「おはよう…………何で、泣いているんだよ」

「ああ、おはよう。全くどれだけ眠ったら気が済むんだよ」


今日からまた新たな生活が幕を開ける。長と贄、そして生涯共にする者同士として。

桜がまるでオレ達を祝福しているような晴れた日の午後の事であった。



終。