「ババ様!」

「なんじゃ、少しは静かにせぬか……」

「し、失礼しました! ですがそうも言っていられません!」


ババ様と……誰だろう。聞き慣れないけれど少し興奮気味の声。

どうしたのだろうと思ったその時だ。


「ただいま……」

「こんなに無残な姿になって……お疲れ様。今はゆっくり休んで下さい……兄さん」


ぼんやりとした視界に、傷だらけの雪を支えるように抱きしめる月花の姿がそこにあった。

雪がそこにいると言う事は確実にアイツもいる。


「お前! そんな血塗れで……! 彩十の事は良いからまずは手当てを!」

「オレなんて後回しで良い! ババ様、気付いているだろ?
雪が毒を盛られている可能性がある事。まずはそっちを診てやれよ!」


聞き慣れた怒鳴り声。これは夢か幻か。そのどちらでもない。これは現実だ。今目の前にいるのは……。