陽が昇るか昇らないかの頃だろうか。普段よりも眠気が酷く来る。

眠ってしまったらもう起きられないような気がする。

目が覚めたとしても、目の前に広がるのは何時もの光景じゃなくて別世界だろう。

眠るな、眠るな。そう自分に心の中で言い聞かせる。身体の自由が利くのであれば、また此処から離れたい。

俺のせいで皆が死ぬのは耐えられない。いや、それだけじゃない。何故だろう。

たかだか二、三日離れただけで奴が恋しくなるのは。

これではまるで俺がアイツを好きだとでも言っているようなものではないか。

……妙に悔しくなる。アイツは助けてくれると言っていた。だから信じて待つ。

約束だって果たしたいから。頼むから帰ってこい。なんだってやってやるから。早く助けてくれよ。


「かい、り…………」


それはまるでうわ言のように。片手で首飾りを握りしめ、花瓶に挿された一輪の秋桜を見て。

思わず涙が溢れてくる。拭う事も出来ず、それに気付いた月花が拭ってくれた事が恥ずかしい。