《長ぁー!!》

一人物思いにふけっていると、突然視界を遮るように白い物体が姿を現した。哉だ。

何かあったから来たのだろう。奴らが近くにいる事を告げに来たのか、それとも別の事なのか。

声色からはあまり緊迫感は感じられなかったが、報告したい事がある事は確か。

それが良い事なのか悪い事なのか。それだけが気になる。


「何だ。大声を出して。雪が起きるだろう」

《あ、それは失礼な事を。実はですね長……嬉しいお知らせが。少し緊張も取れると思いますよ?
彩十さんがちゃんとご飯を食べたんですよ。しかも完食!》

「そうか。だが、しっかり監視もしろ」


あまりにも素っ気ない返事だと感じたのか、哉は“嬉しくないのか”と不思議そうな様子をして見せたが、

嬉しくない訳ではない。まともに食べるだけでも最近はやっとだったし、

完食なんて絶対にしなかった。それをやってのけた事が嬉しい以外に何だと言うのか。

より一層持ち帰らなければと、オレをその気にさせた。彩十だって今懸命なのだから。