「海理様、これを」

里を出てから早数十分。何処までも続く深緑の中、雪が藍色の小刀を渡してきた。

やっぱり武器を渡して来たか。オレには必要はないと言うのに。

受取ろうともしないオレに雪はもうそれを分かっていたのか、すぐに諦めた……かと思えば。


「こんな事がなければ、これを受け取るのは海理様じゃなくて彩十さんなんですけどね」


彩十の手に渡る物だと言う事は分かったがどうしてそれを此処で言う。

今この場所で言わなくても良いだろうに。雪は何が言いたいと言うのだ。


「あれだけそれを自分だと思って持っておけって、彩十さんに花だの首飾りだの渡したくせに。
……此処まで言えば、僕の言いたい事分かりますよね? 海理様はこれを彩十さんだと思って持っていろ、って事です。
万が一何かあれば、それが力を貸してくれます」