哉や雪の声を無視して、オレはある場所に向かってある物を採って来た。

それは丁度今が咲き初めの薄桃色の花。秋だけにしか見られない唯一の桜だ。

それを一輪だけ握りしめてまた戻り、寝ている彩十の所に投げた。

手で渡すのはあまりにも今は妙に恥ずかしかったから。


「か、海理様!?」

「それの仲間の所に全てが片付いたら連れて行ってやる、って伝え忘れたから伝えに来ただけだ。
……死ぬなよ。オレが戻るまでそれとその首飾りをオレと思え。お守りだ」


彩十の返事なんて期待していない。するだけでも辛いだろうし。

突然やって来たオレにまだ戸惑い気味の月花に“頼んだ”とだけ言い残し、

オレはその振り向かず哉と雪、それからババ様の待つ部屋へと向かった。