哉の言うとおり十分程で月花がやって来た。

つまりは出発の時間になったと言っても過言ではない。

本来ならば月花が来たらやっておきたい事があった。

しかし哉と一部ババ様のせいでそれも叶わぬ事と化す。

それをやる時間位なら哉だって許して……って、何故オレが哉の許しを乞わなければならないのだ。

オレは長だ。全ての権限はオレにある。だから“待て”と言えば待つだろう。

もし逆らったら酷い仕置きを考えねばならないが。


「長、どちらへ……? ババ様の部屋はこっちでそっちは玄関……」

「やる事がある。これだけはどうしてもやらねばならぬ事だ。
月花が彩十の面倒を見てくれている今だけしか出来ない事だ。挨拶くらいそれからでも遅くない」