永久の贄[BL]

「長! そろそろ出発のお支度を! 陽が沈んでからじゃ遅すぎです。
あと三十分後には出まょう。ババ様には話はつけてありますので」


こちらの状況をまるで無視し、戸が開くのと同時に開口一番用件をハキハキと言いだす哉。

まるで予想通りの事をしてくれるじゃないか。お前と言う奴は。


「……月花は」

「月花ならあと十分程で来るようです。仲間が言っていました」


仲間と言うのは鳥達の事だろう。

ババ様がいるとはいえ、オレが不在の間の彩十の面倒は月花が見る事になっている。

月花が来ない限りは出発も出来ない。支度があると一旦引き返した雪もその時に一緒に来るだろう。


「オレに出発の支度をする必要はない。必要なものはババ様が揃えてくれるようだからな。
それよりも、哉。少しは落ち着け。興奮するな。
彩十にはうるささでさえ体に毒なのはお前も分かっているだろう?」


すると哉は慌てて両手で口を押さえた。口を押さえた所で、どうにもならないと本人が一番分かっているだろうに。