「まだやらないといけない事があるんだ。まだ……死にたく、ない」


震えた声で視線は天井に向けたまま。

怯えたような目つきで今にも泣きそうな顔をして、彩十は言った。

それは初めて見た彩十の恐怖と脆さだった。それが妙に痛々しく感じる。

オレはまだ生まれてから一度も死ぬ事が怖いと感じた事はないから、

今彩十がどんな気持ちかなんて分かりやしない。

もしオレが同じ人間だったら少しは感じていたのかもしれないが。

だからその恐怖の取り除き方もいまいち分からない。