ただ怖いと言うよりかは心配に近い事ならば一つだけある。哉の事だ。

彩十が足の手当てを受けている時だ。やはりアイツも雪や月花と同じ事を思ったようで、

村を潰そうとオレに提案してきやがった。駄目だと言えば素直に分かってくれた。

が、いつものように笑って“だったら長の補佐をします”と言ったかと思えば次には……。


「長がやるのに戸惑っているなら俺がためらいなくやっちゃいますから」


普段の明るい哉からは考えられない低い声だった。

長い付き合いでもこればかりは慣れないものだ。

稀に現れる哉の裏の人格と言うものは。何かしでかさなければ良いが。




そんな事を思いつつ、隣で眠る彩十の髪をくしゃりと撫でてから改めて眠る事にした。