「……起きたか」


聞き覚えのある低い声。“長”だ。

顔を見せろと言わんばかりに潜り込んだままの俺の布団をひっぺがえされ、わずかではあったが寒気がした。


「安心しろ。儀式の時の布団ではないから」


そんな心配なんて誰がしているものか。

一発ぶん殴ってやろうかと思って、起き上がろうとするも身体が言う事を聞かない。

どうして動いてくれないんだ!


「……激しくやったつもりはなかったが。お前、初めてだったのか?」


当たり前だ。男に犯される男なんて村では一度も聞いた事なんてなかったし。

むしろ俺が村の住人の中でそれの第一号なんじゃないか……ってそんな事を考えている場合じゃない。

言葉で示さず、ギッと睨んでやっても“長”は動じようとしない。

ただ余裕そうな目で俺を見つめるだけだ。