この匂い、この声。


龍太…。


「…離して」


「黙ってろ」


不機嫌な声。


声をだすのも禁止される。


何もできずに、ただ抱きしめられていた。


「なんで逃げねぇんだよ…。あいつからも、俺からも…」


杉山が呟いて、顔が近づいた瞬間。


会場の大拍手。


恐怖からか、会場の中に飛び込んだ。


まだ、入れないかもしれない。


でも、はやく離れたかった。