もちろん足りない部分は出てくる。
呆然とする後ろの彼らをよそに、それらすべてをフォローしてしまう楓だった。
「……」
「……」
「……」
やがて演奏は終わり……会場内は静まり返った。
「……」
僕とて例外ではなく、ただ息を呑んで舞台を見つめる。
誰も、声が出せない。
指一本動かすことさえできない。
暑さからではない冷たい汗が頬を伝った。
―パチ……パチパチパチ…
数分後、ぽつぽつと拍手が鳴り始めた。
「あ…。よ、よろしい。下がりなさい」
審査員も我に返ったようでそう言うと、楓は軽く頭を下げ…後ろにも深く頭を下げ…舞台そでに引っ込んだ。
「……ふっ」
僕も我に返り、ようやく気付いた。
充分……“戦法”だよ、楓くん。

