秘密のMelo♪y②*パリ編*


演奏をせずに演説でも始めるんだろうかとか。

演奏をせずにとんずらでもするんだろうかとか。


彼にはあり得ない発想をぐるぐる廻らせていた。



「……」


じっと見つめていると、楓は何の異変も見せず、普通に……けれど優雅に、弦を弓に乗せた。

初めて見る。

星野楓の演奏らしい演奏を…生で。


あの凛とした瞳。

様々な音を紡ぎだす細長い指。

堂々とした姿勢。


あれこそが、天才と謳われるバイオリニスト、星野楓…だ。



クッと目を細めた瞬間、演奏は始まった。


「…!」


誰もが息を呑み……瞬きもせず釘付けになった。


曲に相応しい力強さ。

細やかな音がしっかりしていて…。


…なにより。

なにより、背後のオーケストラの弦楽器数名全員が。


「……!」


一人の音に完全に飲まれ、演奏をやめてしまっていた。