私が考え込んでいると、横から翔君がフワッと私を抱き締めた。 一瞬にして翔君の香りに包まれ、幸せな気分になる。 「…ついに明日、千春は自由だな」 …忘れてた。 明日から私は外に出てもいいんだ。 仕事をしてもいいんだ。 家族に会ってもいいんだ。 普通の事なのにそれが嬉しくて堪らない。 私は翔君の背中に手を回し、服を強く握り締めた。 …─絶対に離れないように。