苦笑いを噛み締め、椅子から立ち上がる。
空腹感はもう、ない。
お母さんと楓のやり取りを見ていたら、何だか平気に思えた。
―――何も変わらない日常。
薄いレモン色の壁も、楓が傷をつけたテーブルも、ラベンダーが好きなお母さんの香水の匂いも。
何も変わらない。
それは、1番安心して、1番辛い現実だった。
やっぱりまだ、部屋でこもっていたら良かった。
階段を上がりながら、そんなことを考えた。
いっそ、休んでしまおうか。
ふと思った。
正直、学校なんて行っても行かなくても同じ。
なら行かなくてもいいんじゃないのかな―…
どうして自分でも、学校に行こうと思い立ったのか、分からない。
ただ、辛いだけなのに。

