「だけどね?どんなに深い底にいても、私たちの声は届いてるでしょう?」
背中を押してもらいたかったから――――。
「あなたは強い子よ。一人の人間を、こんなにも愛せるんだから」
片方の手は、サクが。
もう片方の手を、楓が。
二人とも一生懸命に、私を引き上げようとしてくれている。
だけど、あと少しの勇気が私にはなくて。
あと少し、あと少し。
そして、無意識に求めたのが、お母さんだったんだ。
「ねぇ、皐月。今、あなたは何を考えてる?」
お母さんの優しい手を、私は求めたんだね。
「誰を想ってる?」
トンッ―――
もう、一歩は踏み出された。

