「……悲しくないってこと?」
両手の拳を、固く握りしめる。
「お父さんが死んでも、悲しくなんかないってこと?」
怒りで声が震える。
そんな私の様子に気づいたのか、お母さんは私と目線を合わせた。
鋭く睨みつける私の視線から逃げようともせず、ただ私をじっと見つめ、
「皐月」
私の名前を呼ぶ。
そして、スッと私の顔に手を伸ばし、温かい手の平で頬を包み込んだ。
「ごめんなさい。言い方が悪かったわ。泣かせるつもりはなかったの」
「へ…?」
泣かせる?
不思議に思う私のまぶたに指を当てたお母さんは、そのまま微笑んだ。
「どうもしないってゆうのは、悲しくないからじゃないの。悲しくなるから、何もしないのよ」
優しく撫でるお母さんの手つきに、やっと自分が泣いているのだと実感する。

