「どうしたんだ、どこか具合でも悪いのかって聞いたら、首を振るんだよ。『違う』って。じゃあ一体何なんだって言ったら、空を指差して、『“空”って皐月みたいだよね』って……」
ハッとして一瞬だけ体が強張った。
――――これ、誰かに似てると思わない?
鏡夜が頭の中で囁く。
「俺、意味がわかんなくて。何だよいきなりって笑ってたら急に微笑んで、『皐月には雨がよく似合う』って言うんだ。ほんと、いきなりすぎて訳わかんないだろ?」
雨―――。
鏡夜が私に…?
少しだけ眉を寄せる私を見透かしたように楓は話を続ける。
「けど、その時の鏡夜は何か真剣でさ。だからちょっとからかいたくなった」
その時のことを思い出しているのか、楓は小さく笑う。
その声が私の鼓膜を揺らし、体の奥に染み渡る。

