確実に遅刻だ。
私はいいけど、楓はいいのかな…
受験生なのに。
楓の背中を眺めながら、そんなことを考えていた。
もっとほかのこと、もっと大切なことを考えるべきなのに。
私は現実から目を逸らしていた。
「――朔夜(サクヤ)は?」
「えっ?」
「朔夜だよ。朝、一緒に行ったんじゃなかったのか?」
前に視線を置いたまま、楓が問う。
前を向いたままだから表情は分からないけど、きっと厳しい表情をしてる。
声が冷たい。
「一緒だったよ」
「どこまで?」
「駐輪場まで」
階段を上がっていた楓の足が早くなる。
チッと舌打ちをし、
「朔夜のヤツ…」
唸るようにつぶやいた。

