500枚280円A4コピー用紙と百均の油性ペン極太

自分で自分の顔面を殴っている鬼がたたらを踏む。よほどいい拳だったのだろう。鬼はうめき声さえ上げず、ただ、後ろへよろけている。ぬめり込んでいるに違いない。

「いかんな、そんなことでは」

ジャケットのポケットから、紙切れを一枚。

先ほどのと同じと思われては困る。コイツは俺のハンドメイドだ。

「なるほど、はがきを千切って水に浸してまた紙にしたヤツですね」

「バカにするな。作るのに苦労するんだぞ」

「絵葉書にするといいですよ。水彩絵の具だと、いい味が出ます」

「書かん」

そこに描き込んだ意味は、水彩画ではない。式にして――『断』だ。

「どれ、その拳、取ってやろう」

ついでに、仕事も終わりにしよう。

紙切れを放り上げる。