自分で自分の顔面を殴っている鬼がたたらを踏む。よほどいい拳だったのだろう。鬼はうめき声さえ上げず、ただ、後ろへよろけている。ぬめり込んでいるに違いない。
「いかんな、そんなことでは」
ジャケットのポケットから、紙切れを一枚。
先ほどのと同じと思われては困る。コイツは俺のハンドメイドだ。
「なるほど、はがきを千切って水に浸してまた紙にしたヤツですね」
「バカにするな。作るのに苦労するんだぞ」
「絵葉書にするといいですよ。水彩絵の具だと、いい味が出ます」
「書かん」
そこに描き込んだ意味は、水彩画ではない。式にして――『断』だ。
「どれ、その拳、取ってやろう」
ついでに、仕事も終わりにしよう。
紙切れを放り上げる。
「いかんな、そんなことでは」
ジャケットのポケットから、紙切れを一枚。
先ほどのと同じと思われては困る。コイツは俺のハンドメイドだ。
「なるほど、はがきを千切って水に浸してまた紙にしたヤツですね」
「バカにするな。作るのに苦労するんだぞ」
「絵葉書にするといいですよ。水彩絵の具だと、いい味が出ます」
「書かん」
そこに描き込んだ意味は、水彩画ではない。式にして――『断』だ。
「どれ、その拳、取ってやろう」
ついでに、仕事も終わりにしよう。
紙切れを放り上げる。

