500枚280円A4コピー用紙と百均の油性ペン極太

峰月の手を掴む。

     ト
これから移ぶことを、それだけでわからせる。心が読めるのだから、わかれ。

直後に、俺達は空中にいた。見える距離には、峰月が言っていた立体駐車場。眼下には、こんな深夜にのん気にコンビニへおでんなぞ買いに出た女――の死体。

そして――鬼。人から人ならざるモノへ変異している物体が、女の頭をかじっていた。もとは優男だったのだろうが、異常に筋肉が発達した右半身に、人間の左半身がぶら下がっているように見える。左右の肩の高さが、笑えるほど違った。これなら、一本足で跳ねる唐傘お化けのほうが、よほど愛嬌がある。

峰月の手を離す。体が自由落下を始める。

「顕」

の言葉で、手中の紙切れが発光し、飴細工でも伸ばすように変形――日本刀に変わる。コピー用紙に油性ペンで作った式にしては、上々だ。

敵は眼下。五十メートル。上空からの気配を、うつけな鬼が気づくはずもない。落下の勢いそのまま、大上段から斬撃を振り下ろす。

刃は、白銀の軌跡を残し――

パキンッ。

「あ」

鬼の肩に多少食い込んだ程度で、折れた。手元に残ったほぼ柄だけの刀を見つめるも、半秒。見上げると、女の生首を咥えた鬼が、首だけ一八〇度回転させ、俺を見下ろしていた。ふむ。顔の右半分だけが異様に肥大化しているので、ニヒルに笑んでいるように見える。シュールである。

感想を口に出すいとまもなく、鬼が体を回す。その勢いを使って、右のこぶしが突き出されていた。