星はまばたきをしない。それが明滅しているように、あるいは揺れ動いているように見えるのは、人間の首が、眼球がわずかな脈動や筋肉の痙攣でぶれているだけなのだ。

「それぇ、ほんとですかぁー。絶対ウソだあ」

「勝手に人の心を読むな」

「はぁ~い善処しまあす」

善処しますとは、たいていは本気で考え直そうと思っていない者の、その場しのぎの言葉である。

「あ、組長、それは偏見ですねえ。私傷ついちゃいますよ」

「言っているそばから『善処します』を破るな」

「すぃません、善処し損ねました」

わざとらしく口を尖らせ、峰月は宵闇が支配する彼方へ視線を戻した。

高所五十メートルから町を眺めての感想は、大したものではない。電波塔の鉄骨の上に立った程度で壮快な景色とでも思っていたら、器が知れる。

「組長、ロマンないですね」

「うるさい。黙って索敵に集中しろ。まだ見つからないのか」

俺と同じ景色を眺める峰月は、まだ新人だ。仕事に対する集中力がまだ浅い。

「いえいえ、ただ、千里眼と読心術とおしゃべりは平行させられるってだけです」

「いい加減黙らんと、突き落とすぞ」

「愛の鞭なら、喜んで♪」

……どうすれば、ここまでひねた少女が出来上がるのか、いっそ興味が湧いてきた。